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| 戦場が原 |
私と栃木県は、何故か深〜い関係があるものだと感じている。そもそも縁などと言うものは、自分から作るものではなく、向こうから来るものなのかもしれない。
初めて栃木県に足を踏み入れたのは、小学校の遠足で日光東照宮へ出掛けた時だと思う。あんなに立派な建物は見たことがなかったので、大変驚いた。それと「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿は、何と言っても印象的だった。うまい具合にさる・さる・さるとなっているのが面白くて、大変気に入って三猿の置物をおみやげに買ってきた記憶がある。
その後、特に覚えている栃木県への旅はなかったし、知人や友達も取り立ててはいなかった。その栃木県と親子共々こんなにまで太い絆で結ばれようとは、実に運命とは妙なものだと思う。
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| 戦場が原 |
私が中学一年の時にお袋が亡くなった。それから3年して親父は再婚したが、その相手の女性が栃木県の人だった。そして、その縁を繋いでくれたのは、亡くなる何日か前にお袋が親父に言った
「あの看護婦さんに指輪を買ってあげてちょうだい」
という一言だった。親父はお袋との約束の指輪をその看護婦さんにプレゼントして、それが縁で家族ぐるみのお付き合いが始まった。私も一緒に出掛けては、実家の人たちと食事をしたり、また近くにある唐沢山に行ったりした。
そして3年後に親父達は一緒になった。しかもその縁は、また深くつながることになり、今度は親父が再婚した人の妹と私が一緒になることになったのだ。まさにお袋の託した指輪が不思議な縁を紡いでいってくれたわけだ。
栃木県の話をするわけが、とんだ我が家の家事情の話になってしまった。しかしながら縁があって親子で同じく栃木県の女性を妻として迎えた私達は、並大抵の栃木県とのお付き合いではないということになったわけだ。たくさんの人達とも知り合うことになった。
そして、その大勢の人達の中から、私は大変貴重な思いをさせてもらっている。それは栃木県の人達の驚くほどの、人に対するお世話の焼き具合なのだ。
「いいがネ」
という言葉を、私は数えきれないほど聞いている。勘定をする時などに、お互いに自分が払おうとすると
「いいがネ、いいがネ」
と言いながら、けっして相手にはお金を払わせない。
又、なにかの時には、必ず相手のために全力を尽くしてくれる。自分の事は後回しだ。佐野源左衛門という人の話を聞いたことがある。雪道になやんだ旅人(北条時頼)のために自分の大事にしていた鉢木を燃やしてもてなしたというくだりだが、まさにその気質が栃木県の人にはあるようだ。その土地の良さは景色や食べ物や、もちろん先人達から続く歴史の中にキラボシの如く輝いているものだが、何と言っても土地柄は人柄だ。
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| 明治の館と幟 |
栃木県人の中でも特に親しいのは、世界遺産がある日光の「西洋料理 明治の館」だ。先代の社長の代からで、こちらも親子代々のお付き合いをさせてもらっている。オーナー始め、みな栃木っ子魂で毎日せっせと働いている。明治の館で出してくれるとちぎ和牛のステーキを特製のタレで食べる醍醐味は格別のものがある。
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| 明治の館 |
その明治の館で、この度の「四代目江戸家猫八」の襲名披露公演をやらせていただいた。明治の館にたなびく「幟」は、まさに明治から伝わる江戸家の芸と重なって、素晴らしい風情を醸し出してくれた。また、霧降の滝を見るのには最高の場所にある「山のレストラン」は、我々に自然の素材で素晴らしい味を提供してくれる。歴史に触れ、食を楽しみ、そして自然を味わえる、こんな三拍子揃った所はそうあるものではない。
小学校の頃、初めて来た日光は、その頃の面影を残し、古き良きものを大事にしながら、東照宮も、また周りの自然も堂々と我々を迎えてくれる。今、東照宮の修復をしているが、その方法は昔と同じように、人の手で、そして自然の素材を使って、コツコツと行われている。先日、その模様を拝見してきたが、その温かさはまさにホッとする思いだ。
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| キビタキ |
私の大好きな野鳥も、日光にはたくさんいる。中でも、戦場ガ原はとてつもなく良い所だ。男体山の麓に広がるその広大な湿原地帯はまさに野鳥たちの楽園だ。戦場ヶ原に響き渡るウグイスの声は、まさに天下一品!カッコウが鳴きながら周遊してきて、すぐ目の前の枝にとまる。こんな親しげな鳥はそう滅多にいるものではない。木道沿いの川に横たわる倒木の上をチョコチョコと水平に歩いているアカゲラも日光ならではだ。上空に飛ぶノスリもその雄大な姿をたっぷりと惜しみなく見せてくれる。
霧降の滝周辺もまた魅力的だ。ある時キビタキの鳴きまねをしていたら、私のすぐ傍にキビタキのメスが飛んできて、しばらく私の周りに纏わりついてきて、離れなかったことがある。
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| オオルリ |
東照宮の門近くで鳴いているミソサザイは、私がどんな所で聞いたミソサザイよりも力強く見事な唄声だった。さすがは日本の代表的な文化遺産である東照宮のミソサザイは風格があって天下人の貫禄がある。
そんな初夏の日光が私は大好きだ。もちろん日光といえば紅葉が見事なところだが、新緑のシーズンはまた違った味がある。生命の息吹を感じ、そしてまた生きる力を与えてくれるパワーがある。どうせ行くなら、そんな元気のもらえるところがいい。
栃木県だったら何処に行っても、そんなパワーに溢れる栃木県の人達が温かく旅人達を迎えてくれる。そして、必ず満足させてくれるだろう。栃木県とは並々ならぬ縁のある私が言うのだから間違いはない。
【プロフィール】
江戸家 猫八(えどや ねこはち) [演芸家]
1949年 東京生まれ
1959年 テレビ初出演
1968年 玉川学園卒業 父・猫八に付いて修業
1972年 落語協会に加入 寄席に出演
1981年 放送演芸大賞受賞
1990年 ベストファーザー賞受賞
2004年 文化庁芸術祭優秀賞受賞
2009年 四代目江戸家猫八 襲名
今までに出演した主な番組
| 「素人民謡名人戦」「小猫話題にアタック」(フジテレビ) 「ゲーム王国」(テレビ東京) 「おもしろ漢字ミニ字典」(NHK) などにレギュラー出演 |
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| 「笑いが一番」(NHK)「真打競演」(NHKラジオ) 映画「かあちゃん」(市川崑監督) などにゲスト出演 |
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| 現在、「文化」「健康」「環境」などをテーマに全国で講演活動中 |








