2限目:民藝学 伝統と今に出会う益子インスパイア旅

おとなのSTUDY TRIP in とちぎ

栃木県を舞台とする、おとなの学び旅へでかけませんか?二限目は、11月に陶器市も開催される秋の益子へ。「民藝学」をキーワードに、"伝統と今"、 "西洋と東洋" ──両極にみえる2つ軸がゆるやかにほどけて溶け合う、刺激的な学びのひとときを。

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1日目

spot 1 ワグナー・ナンドール アートギャラリーわぐなー・なんどーる あーとぎゃらりー

東洋と西洋の精神が、静かに語り合う庭

ハンガリーに生まれ、戦争と革命の時代を生き抜き、妻・ちよとともに日本へ移住した彫刻家ワグナー・ナンドール。彼が晩年まで過ごした益子の里山に、このアトリエ兼ギャラリーがあります。彼は文化・宗教などの相違点よりも各々の共通点を探し、共通点を通してしかお互いに近づくことはできないと考えました。西洋の哲学と東洋の叡智──二つの異なる流れを結び合わせること。それこそが彼の芸術であり、生涯をかけて問い続けたテーマでした。「哲学の庭」には、各国の哲学者や思想家たちがブロンズ像となって集います。彼らは静かに対話を交わし、訪れる人に「平和とは」「生きるとは」と問いかけてきます。その様子は西洋と東洋の垣根を超え、普遍的な真理を伝えようとしているよう。ここは、学びの旅の始まりにふさわしい、精神を耕す庭なのです。
※室内は撮影禁止(今回は特別に撮影しております)

Study Point

戦争の惨禍から八十年。しかし今なお世界の各地で争いは絶えません。平和とは一人ひとりのものではなく、人類すべてに与えられた大切な遺産であることを、ここでは静かに教えられます。洋の東西を超えて過去の偉人たちの眼差しにふれるとき、私たちは未来への責任を思い起こさせられる――この地は、まさに唯一無二の“平和を学ぶ聖堂”のような場所です。

開館は、春(4/15~5/15)と秋(10/15~11/15)。1年間でそれぞれ1ヵ月の間だけなので気を付けて。

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spot 2 つづり食堂つづりしょくどう

オーガニック&マクロビの玄米菜食ごはん

益子の路地にひっそり佇む古民家カフェ。益子焼の器に盛られるのは、地元産の新鮮野菜を中心としたオーガニック&マクロビの里山ごはん。ひとつひとつが、丁寧に選ばれた食材と手間ひまをかけた調理が生み出す、優しく贅沢な味わいです。車麩のフリットに豆乳のタルタルソースを合わせたものは、食べ応えも十分。器や家具、そして静かな空気が、生活を支える“もの”のあり方を問いかけてくるよう。きっと日常を整え、選び取る眼差しの大切さが、私たちの感性を深めてくれるのです。ここには、スマートフォンの画面には収まりきらない、深い豊かさが満ちています。

お休みは、月・火・日。予約が確実です。

spot 3 陶芸体験教室よこやまとうげいたいけんきょうしつよこやま

民藝”益子焼”の歴史と未来に触れる

ろくろに手を添え、土と向き合う。伝統的な益子焼の技に触れながら、自らの呼吸や心のリズムに耳を澄ますひととき。形が生まれては消え、また整えられていく過程には、静かな集中と解放が同居します。土をこね、ろくろを回し、火に託す──その一連の営みは、まさに極上のマインドフルネス。民藝の本質を体感できる時間は、旅の記憶に深く刻まれるでしょう。
そして隣に広がるのは、もうひとつの新しい益子焼の姿。「YOKOYAMA CAUDEX ART(ヨコヤマ・コーデックス・アート)益子本店陶器鉢専門店」では、伝統的な器のイメージを大胆に超えて、植物と器がひとつの宇宙を描きます。ひび割れた質感、岩肌のような風合い、大地の力強さ──そのすべてが南国の植物と呼応し、野生の生命を包み込む舞台となるのです。ここで出会うのは、懐古ではなく、未来へ広がる益子焼。伝統と革新が交わる瞬間に、土の無限の可能性が静かに開かれていきます。

Study Point

私たちが暮らす街も家も、そして日々手に取る器までも、その源はすべて大地にあります。土を捏ね、形を与えるとき、そこにひとつの“いのち”が宿ります。けれど、その器は繊細で、粗末に扱えばたちまち砕けてしまう。だからこそ、人は器を通して“ものを敬う心”を学びます。土をかたどり器を生む営みは、自然の恵みに感謝し、命の儚さと尊さに触れる、貴重な体験なのです。

焼き物は20%小さくなるそう!体験後、約2~3か月後に仕上がります。

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spot 4 pejite 益子ぺじて ましこ

心に響く民藝の美を、暮らしの中へ

こちらのアンティークショップに並ぶのは、時を経ても色褪せない明治・大正・昭和初期の家具や、地元益子を中心とした作家の器。そしてシンプルながら芯の通った洋服たち──どれも大量生産ではなく、日本人の丁寧な手仕事から生まれたものです。大人になった今だからこそ、古き良きものの価値や、手でつくられたものが持つ深みを味わえるようになったように思えます。民藝の精神とは、特別な美術品ではなく、日々の暮らしを支える道具や器の中に美を見いだすこと。その思想は、この空間のすみずみまで息づいています。

おすすめはオリジナルブランド「汲古(きゅうこ)」。釉薬によって「天体」「黒金」「粉雪」と名づけられています。

spot 5 益子舘 里山リゾートホテルましこかん さとやまりぞーとほてる

里山に佇む、アートと癒しに満ちた温泉宿

歩き回った一日の終わりに、心と体を深く癒してくれるのが、“眠れるサウナ”──「ネレルサウナ」。横たわりながら、ただ熱と静寂に身をゆだねる。足を延ばし、目を閉じれば、旅で得た学びや出会いがゆっくりと熟成されていくのを感じます。露天風呂では、岩肌を伝い落ちる雄々しい滝の水音が響きます。柔らかな温泉に浸かっていると、今日の記憶が静かに身体に溶け込むよう。客室は、壁に広がる色彩や造形が素晴らしい、アーティスティックな空間。学び旅にさらなるインスピレーションを添えてくれます。地元の食材をふんだんに使った料理に舌鼓を打ち、生演奏の調べに耳を傾けながら、夜は深く満ちていきます。

Study Point

日本のお風呂文化の源流は、実はお寺にあると言われます。当時は湯船に浸かるのではなく、蒸気で身を清める“蒸し風呂”――今でいうサウナのようなものでした。熱と蒸気に包まれると、身体だけでなく心までもが静かに整えられてゆきます。日常のざわめきや余計なノイズから解き放たれ、ただ“いま”に還る。その感覚は、瞑想にも似た深い安らぎを与えてくれます。

日帰りサウナ&温泉も楽しめるので、気軽に立ち寄ってみて。

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2日目

spot 6 圓通寺えんつうじ

日本の叡智が交差した、紅葉に染まる名刹

秋の益子を語るとき、圓通寺は欠かせません。数百本のもみじが山を染め、鐘楼の響きが時を超えて旅人を静けさへと導きます。かつてここには「大澤文庫」があり、足利学校や金沢文庫と並び学問の要とされました。東西の叡智が集ったその姿は、まるで知のシルクロード。さまざまな言葉や思想が交わり、新しい世界観が紡がれていったのでしょうか。また境内を歩けば、灯籠や建築に刻まれた「猪目(いのめ)」の意匠に出会います。ハート形に似た伝統的な文様で、古来は魔除けや火除けの意味がありました。今では縁結びの象徴へと意味を変え、人々に愛され続けています。ぜひ探してみてください。

Study Point

かつてここ圓通寺は“大澤文庫”と呼ばれ、学問の灯がともる場でした。日本各地から集った若者たちが、知を求めて夜を徹し、未来を夢見て語り合ったと伝わります。現代の私たちがスマートフォンをそっと懐にしまい、往時の学生たちに思いを馳せながら境内を歩くと、響き渡る梵鐘の音が、時を超えて胸の奥に沁みわたり、学びとは本来“心を耕す営み”であることを静かに思い出させてくれます。

11月~12月上旬まではライトアップやフォトコンを実施。撮影の前に本堂への参拝もお忘れなく!

spot 7 作坊 吃ぞーふぁんちぃ

ふわり香る異国のスパイスがくすぐる旅の記憶

益子の森の中にひっそり佇むこちらでいただけるのは、国境を越えたエスニック料理の数々。ふと鼻をくすぐるスパイスの香りは、遥か彼方を旅してきた歴史そのもの。シルクロードを渡り、西洋と東洋をつなげてきた結晶が、いま目の前の一皿に息づいています。真っ赤なブンボーフエに、辛さしっかりなグリーンカレー。香りに導かれ、味わいに心をほどかれるその瞬間──食べることはただの行為ではなく、文化の交差点に立つ体験へと変わります。これまでの旅の記憶も呼び覚まされ、話題が尽きないランチタイムとなることに、間違いありません。

Study Point

益子の森に足を踏み入れると、漂うのはエキゾチックなスパイスの香り。その瞬間、ここがどこであるのか、ふとわからなくなる。不思議に揺さぶられる感覚の中で気づくのは、この町が多様な文化を土のように受け入れ、混ざり合い、ひとつの風土を育んできたということ。――そう、ここはまさに“アジアの益子”。異国と郷土が溶け合う場所です。

お休みは、水・木・金。陶器市などにイベント出店をすることもあるので、最新情報はInstagramを確認してね!細い道を通るので気を付けて。

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spot 8 もえぎ城内坂店もえぎじょうないざかてん

自分らしい、自分のための、運命の器を探す

陶器市のメイン会場にもなる、城内坂にあるギャラリーショップ。”作家と共に育つ”をコンセプトに、益子・笠間の作家による個展や企画展を2週間ごとに開催。若手からベテランまで、幅広い作家の作品を紹介しているので、訪れる度に出会いと驚きをもたらしてくれます。あなたの感性にぴったりと寄り添う、あなただけの器との運命の出会いがあるかもしれません。
またお店の奥に進むと、倉庫をリノベした「moegi BASE」があり、こだわりのコーヒーとともに、器や作品をじっくり選ぶことができます。

ちょうど30周年となる10月はイベント盛りだくさん。絵、イラストなど、陶器以外の手仕事も楽しめます。

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spot 9 西明寺さいみょうじ

千年の祈りを超え、時と世界が溶け合う空間

737年に創建された古刹、獨鈷山普門院西明寺。シイの木の巨木群に囲まれた129段の石段を上ると、国指定重要文化財の楼門と三重塔、そして世にも珍しい笑い閻魔さまが迎えてくれます。ふだんは外から覗くだけですが、毎月15~17日には格子扉が開くタイミングがあります。参道にあるのは、見逃してしまいそうなベース型の石。これは、両肘、両膝、額の5箇所を地面に付けて礼拝する「五体投地」を行うためのもの。本堂にお尻を向ける形で設置されているのは珍しいのですが、これは仏教発祥の地インドに向けて礼拝できるようにするためだそう。まるで世界がひとつの円として繋がる可能性を示しているかのようです。極端に見える両端がつながりほどけ溶け合うたびに、人生が豊かになっていくように思える、そんな益子旅でした。

Study Point

ここ西明寺は“笑い閻魔”で知られています。閻魔とは、“人間一号”とも言われ、その名は“エマ”。ふと、聖書に登場する最初の人間“エヴァ(イブ)”を思い出します。響き合うような名を持つ二人は、同じ源から生まれた物語なのかもしれません。東と西、仏教とキリスト教――異なる文化が不思議なところで繋がっていると想像すると、世界は一つの大きな物語であるように感じられます。

ご本尊の十一面観音立像は、12年に一度(午の年)御開帳され、次のタイミングは2026年の予定です。

  • 1限目:日本史学
  • 2限目:哲学
  • 3限目:デザイン学
  • 4限目:醸造学