温泉研究家が案内。楽しくキレイになる栃木の温泉旅【日光編】

2023年1月15日

*新型コロナウイルス感染拡大等により、施設の利用人数、定休日、営業時間等について、記載と異なる場合がございます。ご利用検討時は、事前に各施設へお問い合わせください。

自然が豊かな栃木県には、多彩な泉質の温泉があり、600を超える源泉数を誇ります。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する石井宏子さんが、首都圏からのアクセスもよい栃木県で、楽しくキレイになる温泉旅をご紹介します。今回の旅は日光温泉へ。1泊2日で温泉や美味しいものを訪ねます。

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石井宏子

温泉ビューティ研究家・旅行作家。温泉の美容力を研究する日本でただひとりの温泉ビューティ研究家。旅にでかけて宿に泊まることをライフワークとし、トラベルジャーナリストとして取材・執筆、講演など年の半分は日本・世界を旅する。『全国ごほうびひとり旅温泉手帖』(世界文化社)、『感動の温泉宿 100』(文藝春秋新書)など。

https://www.onsenbeauty.com/

ノスタルジーを感じさせる「JR日光駅」から旅をスタート

JR東日本日光線「日光駅」

世界遺産に登録されている「日光の社寺」をはじめとする歴史・文化遺産や、豊かな自然、情緒あふれる温泉が立ち並ぶ日光。今回の旅のスタートとなるJR東日本日光線の「日光駅」も、大正元年(1912年)に2代目の駅舎として落成した歴史ある建物です。趣のある佇まいと淡いピンク色の可愛らしい外観に、旅気分も高まります。

JR東日本日光線「日光駅」
住所:栃木県日光市相生町

200年以上にわたって守られる「湯沢屋」のまんじゅうに舌鼓

江戸時代から日光東照宮、日光二荒山神社、日光山輪王寺などの門前町として栄えてきた日光。参拝客が歩く道にはいまも多くの店が並んでいます。楽しみにしていた和スイーツ巡りの1軒目は、文化元年(1804年)創業の「湯沢屋」へ。当時は第11代将軍・徳川家斉公の時代で、一般町人もこぞって日光詣を楽しむようになったころでもあります。

東照宮の「三猿」の姿をかたどったお菓子「賛申(さんざる)」。日光東照宮の御祭神「東照大権現」を賛え申す、の意味が込められている
賛申を型抜きするための道具は、日光彫の名店「三島屋」の特注品

看板ともいえる「湯沢屋のまんじゅう」(元祖日光酒饅頭)は、創業より7代目店主・高村英幸さんへと代々受け継がれてきた銘菓。自家製の糀で発酵させた小麦粉で皮をつくり、餡を包みます。できたてのまんじゅうはふっくらもっちりとした皮の食感と、甘酒のような優しい香り、とろっとした口解けの餡のハーモニーが絶妙で、とてつもなく美味。

看板商品「湯沢屋のまんじゅう」(写真:石井宏子)

2021年12月に、道路拡張に伴う店舗と工場の建て替え工事を終えてリニューアルオープンした湯沢屋。建て替えにあたって店主の高村さんは「創業以来200年以上続く酒饅頭の味を守り抜くためには、発酵に欠かせない天然酵母を守らなければならないのですが、工場を新しくして変わってしまったらどうしよう……と心配でした」とのこと。

そこで、長年使っている木樽など、旧工場のなかにあったものを、天然酵母が生きているかもしれないと大切に保管し、新しい工場に運び込んだそうです。こうした努力で守られた味を、お店の裏手にある「鉢石カフェ」でいただくことにしました。

湯沢屋に隣接する鉢石カフェ

湯沢屋が運営する「鉢石カフェ」は、明治30年と大正11年に建てられた石蔵をリノベーションし、2022年2月23日にオープンしたばかりの空間です。いただいた湯沢屋セットは、酒饅頭、水羊羹、季節の和菓子(この日は道明寺桜餅)と飲み物のセット。ジャズが似合う大人の空間でゆっくり楽しみました。

湯沢屋セット

湯沢屋
住所:栃木県日光市下鉢石町946
定休日:不定休
営業時間:8:00~18:00(鉢石カフェ 10:00~17:00 / 16:30ラストオーダー)
URL:https://www.yuzawaya.jp/
電話:0288-54-0038

丁寧な仕事が至福のひと時を生む「三ツ山羊羹本舗」の水羊羹

続いては、早々にお土産を購入しておこうと、湯沢屋から歩いて3分ほどの距離にある「三ツ山羊羹本舗」へ。明治時代に創業して120年余、羊羹だけをつくり続けるこだわりの名店です。お目当ては「至福の口ほどけ」と表現される水羊羹。

三ツ山羊羹本舗

4代目の三ツ山泰弘さんがいまも大切に受け継いでいるのは、国産小豆を煮るところからじっくりつくり上げること。日光の清らかな軟水を使う水羊羹の上品な味わいを求めて、店には絶え間なくお客が訪れます。

日光の水羊羹は冬が旬で、かつては季節限定での販売だったそう。こたつでつるりとした口ほどけの水羊羹を楽しむのが日光の流儀ということです。自宅に戻り温かな部屋で味わってみると、まさに至福。口に含むと淡雪のようにふわりと溶けて小豆の香りが広がり、すっと消えていきます。

三ツ山羊羹本舗
住所:栃木県日光市中鉢石町914
定休日:元日のみ
営業時間:8:00~18:30
URL:http://www.mitsuyamayoukan.co.jp/
電話:0288-54-0068

「Fudan懐石 和み茶屋」で日光ゆばの魅力を堪能するランチ

日光を代表する食材といえばゆば。その神髄を味わってみたいと、ランチは「元根 御湯波所(元祖 日光湯波)」の看板を受け継ぐ「海老屋長造」からゆばを仕入れているという「Fudan懐石 和み茶屋」へ。

薄さを追求した京都のゆばは「湯葉」と書きますが、2枚仕立てでふっくらとした贅沢な厚みが特徴的な日光のゆばは「湯波」と書きます。日光のゆばの歴史は古く、起源は鎌倉時代の山岳修行道の頃ともいわれます。

Fudan懐石 和み茶屋

レトロな一軒家の店内でいただくゆば懐石ランチは、ひきあげゆば(生ゆば)、ゆば田楽、揚巻ゆばの含め煮、平ゆば包み揚げと、日光ゆばの魅力尽くし。

ゆば懐石ランチ

これまで知っていたゆばの概念を覆すような美味しさに驚きました。生ゆばは、口のなかに大豆の香りが広がり、とろりとした口どけ。さらに印象的だったのは、揚巻ゆばの旨み。たっぷりと煮汁を含んだ揚巻ゆばはしっかりした食感で、味わうほどにゆばの旨みと上品な煮汁がまじりあって忘れられない美味しさです。

「この味は海老屋長造のゆばでしかつくれない」と、店のご主人がおっしゃっていました。ほかにも、青大豆の炊き込みごはんや豆乳の杏仁とうふなど、大豆のパワーをたっぷりいただける幸せなランチです。

Fudan懐石 和み茶屋
住所:栃木県日光市上鉢石町1016
定休日:水曜ほか不定休
営業時間:11:30~15:30(14:30ラストオーダー)
電話:0288-54-3770

森のほとりの宿「ふふ 日光」で日常を離れた時間を過ごす

ふふ 日光

古き良き日光の雰囲気を感じたいと宿泊したのは「ふふ 日光」。日光田母沢御用邸記念公園に隣接する深い森のほとりに立ち、避暑地として栄えた日光を感じさせる空間デザインが特徴的です。ゴヨウツツジが印象的な庭園をながめる「ふふラウンジ」では、湯上がりビールや夕食前のシャンパンなども楽しめます。

部屋ごとにデザインが異なり、宿泊したプレミアムスイート202号室は、歴史を重ねたクラシックホテルの一室を思わせるインテリア。大きな窓にはカウンターテーブルが設置されていて、景色を眺めるのはもちろん、本を読んだり、お茶を飲みながら音楽を聴いたりして寛げました。

プレミアムスイートルーム202号室

棚の隠し扉を開くと、そこには輝く眠り猫が。ほかの棚には、金色の三猿も隠れていました。日光らしさを感じさせてくれる心にくい演出です。テレビなどの電化製品は隠し戸に収納されているので、日常を離れて静かに落ち着いた時間を過ごすことができます。

すべての部屋に専用の温泉が用意されています。窓を開けると森を抜ける風が心地よく、川のせせらぎまで聞こえてくるよう……。日光田母沢御用邸記念公園に隣接する敷地にこの宿を建てるにあたり、新しく温泉を掘削したそうです。「田母沢温泉 ふふ 日光の湯」と名づけられた自家源泉は、アルカリ性単純温泉、pH8.6のアルカリ性で、つるつるとした肌触りが心地よく、湯上がりの肌はすべすべです。

部屋に用意されたプライベート温泉(提供:ふふ 日光)
大浴場(写真:石井宏子)

ホテル内のレストラン「日本料理 節中」でいただいた夕食のテーマは、和洋折衷と日光のストーリー。ボンボニエールが並ぶ可愛い八寸から始まります。和の料理を数品楽しんだら、今度は晩餐会のような気分になる洋のオードブル、メインは日光霧降高原牛フィレ肉ローストを蕗味噌と卵を使った洋風のソースと味わう春らしいお料理です。

ボンボニエールに盛りつけられた前菜(提供:ふふ 日光)

ふふ 日光
住所:栃木県日光市本町1573-8
URL:https://www.fufunikko.jp/
電話:0570-0117-22(Small Luxury Resort総合予約センター)

今年は寅年、2022年。寅年生まれの徳川家康を祀った「日光東照宮」へ

日光の美味しいものからたくさんの力をもらった翌朝は、日光東照宮へ。寅年の2022年だからこそ、寅年生まれの徳川家康公をまつる東照宮をあらためてお参りするのはいかがでしょうか。三猿、眠り猫とあわせて、五重塔の正面に彫刻された「虎」にも注目してみてください。

ほかにも、正面から見ると真上に北極星が輝くように見える陽明門や、建物が崩壊しないよう、魔除けの意味が込められた逆さ柱、色の変化で天気が予想できる敷石など、見どころ満載です。

陽明門(提供:日光東照宮)※陽明門は2022年4月20日頃まで手直し工事中。修理期間中は陽明門全体が素屋根で覆われるため鑑賞不可
東西南北の四つの面に十二支の彫刻が施された五重塔

日光東照宮
住所:栃木県日光市山内2301
拝観時間:4月~10月 9:00~17:00(16:30受付終了) / 11月~3月 9:00~16:00(15:30受付終了)
URL:https://www.toshogu.jp/
電話:0288-54-0560

「にほんかし 雲IZU 日光店」の愛らしいお手軽スイーツ

清々しい気持ちになったところで、再び「口福」を探しに門前町へ。「にほんかし 雲IZU 日光店」のSOPPO焼きは、お猿がそっぽを向いている、なんとも愛らしい風貌です。

にほんかし 雲IZU 日光店のSOPPO焼き
にほんかし 雲IZU 日光店

たい焼き風にあんこやカスタードクリームを入れて焼き上げられたできたて熱々を購入して、お店の前でいただきます。周りはカリッとなかはふわふわ、優しい味わいのカスタードクリームがとろり。熱々をはふはふしながら味わえば、口のなかはすっかり幸せに満たされます。

にほんかし 雲IZU 日光店
住所:栃木県日光市上鉢石町1018
定休日:木曜日
営業時間:10:00~17:00
URL:https://www.kumoizu.com/
電話:0288-25-5158

冷えた体を「日光星の宿」の立ち寄り湯で温める

少し寒くなってきたので、「日光星の宿」で立ち寄り入浴。宿泊もできる星の宿は、東照宮の門前町から歩いて行ける便利な場所にあります。

日光温泉は、1987年に掘削された温泉。お宿のなかにある庭園を眺めながら、ヒノキ風呂で楽しみます。泉質はアルカリ性単純温泉で、pH9.5。やわらかな感触で肌をなめらかに導きます。冷えた手足がポカポカに温まって、ほっこりと癒されます。

日光星の宿

日光星の宿
住所:栃木県日光市上鉢石町1115番地
営業時間:日帰り入浴は12:00~15:00
URL:https://www.hoshinoyado.com/
電話:0288-54-1105

日光ゆばの可能性を感じさせてくれる「日光湯波巻き 全 ZEN」のランチ

日光湯波巻き 全 ZEN

2日目のランチは、大胆なアレンジで新しい日光ゆばの可能性を提案する創作料理の「日光湯波巻き 全 ZEN」へ行ってみることに。スタイリッシュな店内で味わう日光湯波巻き御膳は、挑戦的で楽しいものでした。

見た目が可愛くて写真に収めたくなる「湯波巻き」ですが、ひと口味わってみるとビックリ。ゆばで巻いたごはんのなかの熟成肉の味わいが突き抜けてきます。和牛の肩ロースの一部であるザブトンという霜降り部位を熟成させ、塩を振り網焼きしているそうで、まるで大きな肉の塊を味わっているかのような存在感。つくりたての日光ゆばと和牛のギャップが楽しくて、ひと口、もうひと口とつい箸が進んでしまいます。

日光の温泉旅は、伝統を継承することの素晴らしさと、進化を続ける挑戦の楽しさと、両方を感じる旅でした。

日光湯波巻き 全 ZEN
住所:栃木県日光市上鉢石町1007
定休日:火曜日
営業時間:ランチ 11:00~15:30 / ディナー 17:00~21:00
URL:https://nikkoyubamakizen.gorp.jp/
電話:0288-53-3470

取材・文:石井宏子 写真:サトウタツヲ(NaSuMo)

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